親しい人とお金を貸し借りする。それだけのことに見えて、個人間融資には税金の話がついて回ります。借りた人と貸した人で、かかる税金が変わるからです。「もらったわけではないのに、なぜ?」と感じる場面もあります。
この記事では、個人間融資の税金を立場ごとに整理します。借り手の贈与税、貸し手の所得税、そして確定申告がいくらから必要になるか。順番に見ていきましょう。むずかしい用語は、できるだけかみくだいて説明します。
個人間融資とは?税金の前に知っておきたい基本
税金の話に入る前に、言葉の意味をそろえておきます。個人間融資といっても、その中身は1つではありません。誰と誰の間のお金の動きなのか。ここで税金の扱いが大きく分かれます。まずは全体像をつかみましょう。
そもそも個人間融資とはどんなお金の貸し借り?
個人間融資とは、銀行や消費者金融を通さず、人と人とでお金を貸し借りすることです。親が子に渡す。友人どうしで融通する。どれも個人間融資にあたります。
ポイントは「貸し借り」だという点です。あげたのではなく、返す約束がある。この前提があるかどうかで、税金の扱いが変わります。返す約束がないと、それは贈与に近づいていきます。
親族・友人間とSNS上の個人間融資はどう違う?
同じ個人間融資でも、2つの世界があります。1つは親族や友人との貸し借りです。もう1つは、SNSや掲示板で知らない相手と結ぶ貸し借りです。
前者は税金の知識があれば対処できます。後者は事情が異なります。SNS上の個人間融資には、個人を装った違法業者が紛れ込んでいます。税金以前に、関わるべきではない領域です。この記事では両方を扱いますが、扱い方は分けて考えます。
税金がかかるのは「借りる人」と「貸す人」どちら?
結論から言うと、どちらにもかかる可能性があります。ただし、税金の種類が違います。借りる人は贈与税、貸す人は所得税。ここを混ぜないことが大切です。
下の表で全体を整理します。
| 立場 | かかりうる税金 | 課税の対象 |
|---|---|---|
| 借りる人 | 贈与税 | 利息相当額、または借入金そのもの |
| 貸す人 | 所得税・住民税 | 受け取った利息 |
借りた元本そのものや、返した元本には、原則として税金はかかりません。まずはこの土台を覚えておきましょう。
個人間融資でお金を借りた人に税金はかかる?
借りた側がまず気になるのは、もらった現金に税金がつくのか、という点でしょう。ここは安心材料と注意点が混ざります。条件しだいで、課税されたりされなかったりします。何がその分かれ目になるのかを見ていきます。
借りたお金そのものに税金がかからない理由とは?
国税庁は、親子や祖父母と孫などの間の貸し借りについて、考え方を示しています。返済能力や返済状況から見て、本当に貸し借りだと認められる場合があります。その場合、借入金そのものは贈与になりません。
理由はシンプルです。借りたお金は、いずれ返すお金だからです。手元に残る財産ではありません。だから、もらった財産にかかる贈与税の対象から外れます。
真の貸し借りと認められる条件とは?
問題は「本当に貸し借りか」をどう示すかです。当人どうしが「貸した」「借りた」と思っていても、税務署はそれだけでは判断できません。客観的な事実が必要になります。
判断材料になるのは、おもに次の点です。
- 返済期日や返済方法が決まっているか
- 実際に返済が行われているか
- 借り手にきちんと返済能力があるか
口約束だけでは弱い、という点は意識しておきましょう。
返済能力を超える借入が問題になる理由とは?
たとえば、収入のない人が多額のお金を借りたとします。返すあてが見えない。この状態だと、税務署は別の見方をします。
返済能力から見て借入額が大きすぎる場合、貸し借りではなく贈与とみなされることがあります。形は借入でも、実質は財産をもらったのと同じ、という判断です。借りる金額は、自分の返済力に見合わせることが大切です。
無利子・低金利の借入で贈与税がかかるのはなぜ?
「利息を取らなければ親切」と思いがちです。ところが税金の世界では、無利子がかえって課税のきっかけになります。意外に感じる部分かもしれません。仕組みを知れば、なぜそうなるのかがすっきりします。
利息相当額が「みなし贈与」とされる仕組みとは?
無利子でお金を借りると、借りた人は利息を払わずにすみます。その払わずにすんだ分は、得をしたお金だと考えられます。国税庁も、この利息に相当する利益が贈与として扱われる場合があるとしています。
これが「みなし贈与」です。現金を直接もらっていなくても、経済的な利益を受けたとみなされます。無利子の貸し借りでは、利息分が贈与税の対象になることがあります。
「ある時払いの催促なし」が全額贈与扱いになる理由とは?
返す時期を決めず、催促もしない。出世したら返せばよい。こうした取り決めは、一見やさしく見えます。けれど税務上は危うい形です。
国税庁は、「ある時払いの催促なし」や「出世払い」のような貸借について、考え方を示しています。この場合、利息分だけでなく借入金そのものが贈与として扱われます。返す気配のない貸し借りは、もらったのと同じと見られる、と理解しておきましょう。
親子間でも贈与税の対象になるケースとは?
「家族なら大丈夫」という思い込みは禁物です。親子間でも、条件によっては贈与税がかかります。むしろ家族間だからこそ、税務署はていねいに事実関係を確認します。
たとえば、返済期日を決めずに無利子で渡したケースです。利息相当額に贈与税が生じる可能性があります。さらに借り手の収入に対して借入額が大きすぎれば、全体が贈与とみなされることもあります。身内であっても、形式を整える意味は大きいといえます。
個人間融資でお金を貸した人にかかる税金とは?
ここからは貸す側の話です。貸した人は「お金を出しただけ」と思うかもしれません。でも、利息を受け取ると景色が変わります。今度は所得税の世界に入ります。借り手とは別の角度から整理します。
受け取った利息は何所得になる?
友人や知人に個人的にお金を貸し、利息を受け取ったとします。この利息は、預金の利子とは扱いが違います。事業として貸したのでなければ、受け取った利息は雑所得になります。
雑所得とは、ほかの所得区分に当てはまらない所得のことです。預金利子のように税金が天引きされる仕組みもありません。だから、自分で申告する必要が出てきます。
元本の返済を受けても税金がかからない理由とは?
貸したお金が返ってきた。その元本部分には、税金はかかりません。理由は単純です。もともと自分のお金が戻ってきただけだからです。
増えた財産ではないので、所得になりません。課税の対象は、あくまで利息の部分だけです。「返ってきた元本」と「受け取った利息」を分けて考える、これが基本です。
事業として貸した場合に扱いが変わる点とは?
同じ貸し付けでも、繰り返し営利目的で行うと話が変わります。その場合は事業とみなされることがあります。所得区分は雑所得ではなく、事業所得になります。
所得区分が変われば、申告のしかたや経費の扱いも変わります。下の表で違いを整理します。
| 貸し方 | 利息の所得区分 |
|---|---|
| 一時的・個人的に貸した | 雑所得 |
| 営利目的で繰り返し貸した | 事業所得 |
| 預貯金の利子 | 利子所得(個人間融資は対象外) |
ただし、反復継続して営利目的で貸すと、貸金業の登録が必要になる点には注意が必要です。
受け取った利息の確定申告はいくらから必要?
貸す側が次に悩むのが申告です。少額でも申告がいるのか。会社員と個人事業主で違うのか。ここはルールが少し細かくなります。誤解が起きやすいところなので、順を追って確認します。
利息20万円以下でも申告が必要になるケースとは?
会社員の場合、給与以外の所得が年20万円以下なら、所得税の確定申告は不要とされることがあります。受け取った利息もこの判定に含まれます。だから「20万円以下なら不要」と言われます。
ただし、これは条件つきです。もともと確定申告が必要な人は、利息が少額でも申告が必要です。医療費控除を受ける人なども、ここに含まれます。
所得税が不要でも住民税の申告がいる理由とは?
ここが見落とされやすい点です。所得税の申告が不要でも、住民税は別ルールだからです。20万円以下の特例は、あくまで所得税の話にとどまります。
住民税には、その特例がありません。利息を受け取ったら、原則として住民税の申告が必要になります。「所得税はセーフ、でも住民税は別」と覚えておくと安心です。
会社員と個人事業主で申告条件はどう違う?
立場によって申告のラインが変わります。会社員は年末調整があるため、20万円以下の特例を使える場面があります。一方、個人事業主はそうはいきません。
個人事業主は、もともと確定申告をする立場です。そのため、受け取った利息の額にかかわらず申告が必要になります。下の表で違いを確認しましょう。
| 立場 | 所得税の申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 会社員(給与のみ) | 利息など年20万円以下なら原則不要 | 原則必要 |
| 個人事業主 | 金額にかかわらず必要 | 必要 |
贈与税は年間いくらから?基礎控除と税額の考え方
借り手側でみなし贈与が出たとき、次に気になるのが金額です。いくらまでなら税金がかからないのか。いつ申告すればよいのか。ここを押さえると、過度に心配せずにすみます。落ち着いて数字を見ていきましょう。
年間110万円の基礎控除とは?
贈与税には基礎控除があります。1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が、110万円以下なら贈与税はかかりません。これは多くの人にとって安心材料です。
無利子の借入で生じる利息相当額も、この枠の中で考えます。ほかの贈与と合わせて年110万円以下なら、贈与税は発生しません。ただし、複数の贈与がある年は合算する点に気をつけましょう。
110万円を超えた場合の税額計算の流れとは?
年間の贈与が110万円を超えると、超えた部分が課税の対象になります。まず合計額から110万円を引きます。その残りに税率をかけて税額を出します。
税率は金額が大きいほど高くなる仕組みです。また、親や祖父母から成人の子・孫への贈与には、別の税率表が使われます。金額や相手によって計算が変わるため、迷ったら早めに確認しましょう。
贈与税の申告と納税の期限はいつまで?
期限の管理も大切です。贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年に行います。期間は2月1日から3月15日までです。
この期間内に、申告書の提出と納税の両方を終える必要があります。所得税の確定申告の時期と近いので、混同しやすい点に注意してください。期限を過ぎると、加算税などの負担が生じることもあります。
個人間融資が贈与と認定されないための対策とは?
ここまでで、貸し借りが贈与とみなされるリスクが見えてきました。では、どう備えればよいのか。答えは「第三者から借りるときと同じ形にする」ことです。具体的な対策を3つの角度から見ていきます。
金銭消費貸借契約書(借用書)に書くべき項目とは?
口約束は証拠になりにくいものです。だからこそ、契約書を作る意味があります。金銭消費貸借契約書、いわゆる借用書です。
書いておきたい項目は次のとおりです。
- 借りた金額と借りた日
- 返済の期日と返済方法
- 利率(利息を設定する場合)
- 貸し手と借り手の署名
返済期日や利率を定めない貸し借りは、贈与を疑われやすくなります。
銀行振込で返済実績を残すことが重要な理由とは?
契約書を作っても、それだけでは足りません。実際に返済している事実が必要です。ここで効いてくるのが振込です。
現金の手渡しは記録が残りません。一方、銀行振込なら日付と金額が通帳に残ります。「契約どおりに返している」と示せる記録こそ、強い証拠になります。毎月コツコツ返す姿勢が、貸し借りである証になります。
利率はどの程度に設定すればよい?
無利子はみなし贈与のきっかけになります。では、いくらに設定すればよいのか。明確な「正解の数字」はありませんが、考え方はあります。
第三者から借りるときの金利を1つの目安にできます。極端に低い利率も、利息分が贈与とみなされる余地を残します。世間の相場とかけ離れない範囲で設定すると安心です。利息を受け取る側に所得税が生じる点も、あわせて確認しておきましょう。
SNS・掲示板を使った個人間融資の税金とリスク
ここで、もう1つの個人間融資に触れます。SNSや掲示板で知らない相手と結ぶ貸し借りです。税金の前に、安全の話をしなければなりません。リスクの中身を具体的に知っておきましょう。
違法なヤミ金融が「個人」を装う手口とは?
「審査なし」「誰でも貸します」。こうした書き込みを見かけることがあります。一見、親切な個人に思えます。けれど実態は別のことが多いものです。
金融庁は、SNS等を利用した個人間融資に注意を呼びかけています。個人を装ったヤミ金融業者が、違法な貸し付けを行う事案が起きています。個人情報を抜き取られ、犯罪に巻き込まれる危険もあります。
高金利が出資法・貸金業法に違反する理由とは?
お金を繰り返し営利目的で貸すには、貸金業の登録が必要です。登録のない者が業として貸せば、貸金業法に違反します。SNSで「貸します」と書き込む行為自体が、禁止行為にあたる恐れもあります。
さらに、法外な高金利は出資法に違反します。利息の名目で、貸した額をはるかに超える返済を求められるケースがあります。返済が滞ると、違法な取り立てに発展することもあります。
税金を考える以前に関わってはいけない理由とは?
このタイプの個人間融資では、贈与税や所得税の計算より前に問題が起きます。性的な要求をされる「ひととき融資」、保証金をだまし取る手口。被害は多岐にわたります。
日本貸金業協会も金融庁も、利用しないよう呼びかけています。困ったときは、正規の金融機関や公的な相談窓口を頼るのが安全です。税金の損得を考える対象ではない、と割り切ることが大切です。
個人間融資で見落としやすい相続への影響とは?
最後に、少し先の話をします。貸したお金は、貸した本人が亡くなったあとにも関わってきます。相続です。意外と知られていない視点なので、ここで触れておきます。
貸したお金(債権)が相続財産になる理由とは?
お金を貸すと、その人は「返してもらう権利」を持ちます。これを債権といいます。債権は財産の一種です。
貸した人が亡くなると、この貸付金も相続財産に含まれます。「身内に貸しただけ」でも、その債権は相続税の対象になります。現金がなくても、権利として財産が残るわけです。
借り手が相続人の場合に起きることとは?
親が子に貸していたとします。その親が亡くなると、子は相続人になります。ここで少しややこしい関係が生まれます。
子は借り手であり、同時に貸付金という財産を相続する立場になります。借りていた事実が、相続の場面で改めて確認されることになります。遺産分割の話し合いで、ほかの相続人との間でもめる原因にもなりかねません。
借用書がないと相続時に困るケースとは?
ここでも記録が物を言います。借用書や返済記録がないと、貸し借りの事実を示せません。生前は問題なくても、相続の場面でつまずきます。
貸付金だったのか、贈与だったのか。判断がつかず、相続税の計算で争いになることがあります。契約書と振込記録を残しておけば、こうした混乱を防げます。貸すときの一手間が、あとで家族を守る備えになります。
まとめ
個人間融資の税金は、立場と契約のかたちで決まります。借りた人は贈与税、貸した人は所得税。そして、その明暗を分けるのが、契約書と返済の記録です。無利子や期限なしの貸し借りは、思わぬ課税につながります。形を整えるひと手間が、安心に直結します。
なお、贈与税には基礎控除を活かした生前贈与という考え方もあります。毎年少しずつ財産を渡す方法です。貸し借りと贈与は近い場所にあるからこそ、目的に応じて使い分ける視点が役立ちます。判断に迷う金額や、相続が絡む場面では、自己判断で進めないことです。まずは借用書を作り、振込で記録を残す。今日できる一歩から始めてみてください。最終的な課税の判断は、税務署や税理士に確認しておくと確実です。
参考文献
- 「No.4420 親から金銭を借りた場合」- 国税庁
- 「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」- 国税庁
- 「No.2606 金銭を貸し付けたとき」- 国税庁
- 「タックスアンサーコード一覧(贈与税)」- 国税庁
- 「金銭の貸付けによる所得(公表裁決事例)」- 国税不服審判所
- 「SNS等を利用した『個人間融資』にご注意ください!」- 金融庁
- 「悪質な金融業者にご注意!」- 日本貸金業協会