適応障害の休職でお金がない時はどうする?生活費を確保する方法

適応障害の休職でお金がない時はどうする?生活費を確保する方法 マネーリテラシー

適応障害と診断され、医師から休職を勧められた。でも貯金は1〜2か月分しかない。そんな状態で「適応障害で休職したいけどお金がない」と検索している方は多いはずです。

結論から言うと、休職中の収入は完全にゼロにはなりません。傷病手当金で給与の約3分の2が入り、支払いの猶予や貸付を組み合わせれば生活は維持できます。この記事では、適応障害の休職でお金がない時に「いつ・何を・どの順番で」やればいいかを時系列で整理します。金額は2026年9月時点の制度に沿って計算しています。

  1. 適応障害で休職すると収入はどうなる?
    1. 休職中に会社から給料が出ない理由とは?
    2. 有給休暇と休職はどちらを先に使うべき?
    3. 収入ゼロの期間はどのくらい続くのか
  2. 休職中に「入るお金」と「出ていくお金」の全体像とは?
    1. 休職中に受け取れる可能性があるお金の種類
    2. 休職中も止まらない支払いの種類
    3. 月収25万円モデルで見る手取り収支の試算例
  3. 傷病手当金はいくら・いつから・いつまでもらえる?
    1. 1日あたりの支給額の計算式
    2. 支給開始日から通算1年6か月のルールとは?
    3. 初回の振込が休職開始から2〜3か月後になる理由
  4. 傷病手当金の申請で失敗しないためには?
    1. 申請書の記入者と提出先の流れ
    2. 待期3日間が完成しないケースとは?
    3. 不支給・減額になる条件と対処法
  5. 手当が振り込まれるまでの空白期間をどう乗り切る?
    1. 貯金の取り崩し順と最低限残す金額
    2. 会社に立替払いや前払いを相談できるか
    3. 家賃・カード・奨学金の支払い猶予を申し出る方法
  6. 休職中の社会保険料・住民税はどう払う?
    1. 会社が立て替える仕組みと精算方法
    2. 立替分を払えない時に会社と交渉するポイント
    3. 住民税の分割納付・減免を自治体に相談する手順
  7. 通院費・薬代を減らす制度とは?
    1. 自立支援医療で自己負担が1割になる仕組み
    2. 申請に必要な書類と窓口
    3. 高額療養費との使い分け
  8. 傷病手当金だけで足りない時に使える貸付・支援制度とは?
    1. 生活福祉資金貸付制度の種類と条件
    2. 国民年金保険料の免除・納付猶予
    3. 生活保護を検討する目安と相談先
  9. 障害年金や労災は適応障害でも対象になる?
    1. 障害年金の対象になりにくい理由と例外
    2. 業務が原因の場合に労災の休業補償が使える条件
    3. 労災と傷病手当金はどちらを選ぶべきか
  10. 休職と退職ではどちらがお金の面で有利?
    1. 退職後も傷病手当金を受け取り続ける条件
    2. 失業給付との関係と受給期間の延長手続き
    3. 退職後に自分で払う健康保険料・年金保険料の違い
  11. 休職中にアルバイトや副業をしてもいい?
    1. 傷病手当金が止まる可能性がある理由
    2. 就業規則違反になるケース
    3. 収入を得たい時に先に確認すべき相手
  12. お金の不安を相談できる窓口はどこ?
    1. 主治医・会社の人事・産業医に相談できること
    2. 社会福祉協議会・自治体の生活困窮者自立支援窓口
    3. 社会保険労務士・精神保健福祉士に相談するメリット
  13. 適応障害の休職とお金に関するよくある質問
    1. 傷病手当金に税金はかかる?
    2. 休職中に賞与は支給される?
    3. 傷病手当金の1年6か月を使い切ったらどうなる?
    4. 休職期間が終わっても復職できない場合の収入は?
    5. 家族の扶養に入りながら傷病手当金を受け取れる?
  14. まとめ
    1. 参考文献

適応障害で休職すると収入はどうなる?

まず知っておきたいのは、休職と給与の関係です。休職に入った瞬間、給与明細の数字がどう変わるのか。ここを理解しておくと、後の制度の意味がつかみやすくなります。最初の1か月で起こることを順番に見ていきます。

休職中に会社から給料が出ない理由とは?

給与は「働いたこと」への対価です。休職中は労働の提供がないため、会社には支払い義務がありません。これはノーワーク・ノーペイの原則と呼ばれます。

「休業手当が6割出るのでは?」と思う方もいるでしょう。休業手当は会社都合で休ませた場合の制度です。病気による休職には適用されません。適応障害の休職では、会社からの給与は原則ゼロになります。ただし就業規則で独自の給与保障を定める会社もあります。人事に確認しておく価値はあります。

有給休暇と休職はどちらを先に使うべき?

有給休暇を使えば給与は満額入ります。傷病手当金は給与の約3分の2です。金額だけなら有給が有利に見えます。

ただし注意点があります。有給を使い切ってから休職に入ると、復職後に通院で休む日の有給が残りません。復職後の通院用に5日程度は残すという考え方が現実的です。また、有給で休んだ日も傷病手当金の待期3日間にはカウントされます。有給を最初の3日に充てて待期を完成させる方法もあります。

収入ゼロの期間はどのくらい続くのか

休職初月の給与は、休職前に働いた日数分だけ日割りで入ります。翌月からは0円です。傷病手当金の初回振込は、申請から審査を経て休職開始から2〜3か月後になるのが一般的です。

つまり「給与が止まってから手当が入るまで」の1〜2か月が最も苦しい期間です。この空白期間をどう乗り切るかが、記事全体の核心になります。

休職中に「入るお金」と「出ていくお金」の全体像とは?

制度を1つずつ覚える前に、家計全体を俯瞰しておきましょう。入るお金と出るお金を一覧にすると、どこに手を打つべきかが見えてきます。ここでは種類の整理と、モデルケースでの試算を示します。

休職中に受け取れる可能性があるお金の種類

休職中に受け取れるお金は、大きく4つの分類に分けられます。受け取る・減らす・猶予する・借りるの4つです。

分類 制度・手段 内容
受け取る 傷病手当金 給与の約3分の2を健康保険から受給
受け取る 労災の休業補償給付 業務が原因と認定された場合のみ
減らす 自立支援医療 通院費の自己負担が3割から1割へ
減らす 高額療養費 医療費の月額上限を超えた分を払い戻し
猶予する 住民税の分割納付 自治体に相談して分割や猶予
借りる 生活福祉資金貸付 社会福祉協議会の低利・無利子貸付

「受け取る」だけに目が行きがちです。しかし休職中の家計は「減らす」「猶予する」の効果も大きいのです。

休職中も止まらない支払いの種類

休職中でも会社に在籍している限り、社会保険料は発生し続けます。健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上)です。給与から天引きできないため、会社が立て替えるか、本人が振り込むことになります。

住民税も止まりません。前年の所得に対して課税されるためです。休職中に「収入はゼロなのに、社会保険料と住民税は払い続ける」状態になるのは、この仕組みが原因です。

月収25万円モデルで見る手取り収支の試算例

月収25万円(標準報酬月額26万円)、40歳未満、東京都の協会けんぽ加入というモデルで試算します。

項目 金額(月・概算)
傷病手当金 約173,000円
健康保険料(本人負担) 約△13,000円
厚生年金保険料(本人負担) 約△24,000円
住民税 約△12,000円
手元に残る金額 約124,000円

給与25万円の時の手取りは約20万円です。休職後は約12万円まで下がります。手取りベースでは約6割という感覚を持っておくと、家計の見直し幅が判断しやすくなります。保険料率や住民税額は加入先・自治体・前年所得で変わります。

傷病手当金はいくら・いつから・いつまでもらえる?

家計の柱になるのが傷病手当金です。名前は知っていても、計算式や期間の数え方を正確に知る人は多くありません。ここでは「いくら」「いつから」「いつまで」の3点に絞って解説します。

1日あたりの支給額の計算式

傷病手当金の1日あたりの金額は、次の式で決まります。

支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2

標準報酬月額は、給与を等級に当てはめた金額です。月収25万円なら標準報酬月額は26万円になります。26万円÷30=8,670円。その3分の2で1日あたり約5,780円です。30日分で約173,000円になります。

加入期間が12か月未満の場合は計算が変わります。入社後の標準報酬月額の平均と、全被保険者の平均(30万円)のうち低い方が使われます。

支給開始日から通算1年6か月のルールとは?

支給期間は「支給開始日から通算1年6か月」です。2022年1月の改正で「通算」になりました。それ以前は暦の上で1年6か月経つと終了していました。

通算とは、実際に支給された日数を積み上げる数え方です。途中で復職して手当が止まった期間はカウントされず、その分を後ろに繰り越せます。復職と再休職を繰り返しても、受給できる合計日数は減りません。この改正後のルールは2026年9月時点でも有効です。

初回の振込が休職開始から2〜3か月後になる理由

申請は「休んだ期間」を過ぎてからしか出せません。1か月分をまとめて申請する会社が多いため、最初の締めまでに約1か月かかります。

そこから医師の証明、会社の証明、健康保険への提出、審査という流れです。審査には2〜4週間かかります。結果として初回入金は休職開始から2〜3か月後になります。申請の締めを2週間単位にできないか会社に相談すると、初回入金を早められる場合があります。

傷病手当金の申請で失敗しないためには?

金額と期間がわかっても、申請でつまずけば入金は遅れます。書類の流れ、待期期間の落とし穴、不支給になる条件。この3つを押さえれば、申請の失敗はほぼ防げます。

申請書の記入者と提出先の流れ

申請書は3者が記入します。本人・医師・会社です。

記入者 記入内容 注意点
本人 氏名、振込口座、休んだ期間 期間は医師の証明と一致させる
医師 労務不能と認めた期間、傷病名 診察日以降の期間は証明できない
会社 出勤状況、給与支払いの有無 会社経由で提出するのが一般的

提出先は協会けんぽの都道府県支部、または健康保険組合です。会社が取りまとめて提出するケースが大半です。医師の証明は診察を受けた日までしか書けないため、月末近くに受診する習慣をつけると申請が滞りません。

待期3日間が完成しないケースとは?

待期は「連続した3日間」の休みです。土日祝も有給もカウントされます。ただし連続が条件です。

2日休んで3日目に出勤すると、待期は完成しません。翌日からまた数え直しです。「無理して1日だけ出社した」せいで、支給開始が1週間近く遅れることがあります。診断書が出た時点で、まとまって休む判断が金銭面でも有利です。

不支給・減額になる条件と対処法

不支給になる主なケースは3つです。1つ目は給与が支払われている日。2つ目は医師が労務不能と認めていない期間。3つ目は業務上の傷病で労災の対象になる場合です。

減額になるのは、給与が傷病手当金より少ない額で支払われた場合です。差額だけが支給されます。会社独自の給与保障がある場合は、傷病手当金との調整がどうなるかを事前に確認しておくと安心です。

手当が振り込まれるまでの空白期間をどう乗り切る?

ここが最も現実的な悩みです。手当は入る。でも入るのは2〜3か月後。その間の家賃と食費をどう回すか。使える手段は「貯金」「会社」「支払い先」の3方向にあります。

貯金の取り崩し順と最低限残す金額

まず把握すべきは「傷病手当金が入るまでの必要額」です。家賃・食費・光熱費・通信費・保険料の3か月分を出してみてください。月15万円なら45万円です。

貯金がそれに届かない場合、取り崩す順番を決めます。普通預金 → 定期預金 → 積立投資の停止の順が基本です。積立の停止は解約とは違います。先に「毎月の引き落とし」を止めることで、手元の現金が減るスピードを落とせます。

会社に立替払いや前払いを相談できるか

会社に相談できることは2つあります。1つは傷病手当金の申請サイクルを短くしてもらうこと。もう1つは社会保険料の立替分の精算時期を遅らせてもらうことです。

給与の前払いは法律上の義務ではありません。ただし福利厚生として貸付制度を持つ会社もあります。就業規則の「貸付」「共済」の項目を確認してみてください。相談は人事宛にメールで残す形が確実です。

件名:休職中の社会保険料の支払いについてのご相談

人事部 〇〇様

お世話になっております。〇〇部の〇〇です。
休職中の健康保険料・厚生年金保険料の支払い方法についてご相談させてください。

現在、傷病手当金の初回支給が〇月頃になる見込みです。
それまでの期間、立替分の精算を傷病手当金の入金後にしていただくことは可能でしょうか。
難しい場合は、分割での支払いなど、可能な方法をご教示いただけますと幸いです。

お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

〇〇 〇〇

家賃・カード・奨学金の支払い猶予を申し出る方法

支払い先には、猶予制度を持つところが多くあります。連絡する前に諦めないことが大切です。

支払い先 相談先 主な対応
家賃 管理会社・大家 支払日の後ろ倒し、分割
クレジットカード カード会社のコールセンター リボ変更、支払い猶予
奨学金(日本学生支援機構) 返還相談窓口 減額返還、返還期限猶予
住宅ローン 借入先の金融機関 返済条件の変更
公共料金 各事業者 支払期限の延長

連絡は滞納する前に入れるのが鉄則です。滞納後の相談は信用情報に影響が出る場合があります。日本学生支援機構の返還期限猶予は、傷病を理由に申請できます。

休職中の社会保険料・住民税はどう払う?

空白期間の次に来るのが、社会保険料と住民税の問題です。休職して初めて「こんなに引かれていたのか」と気づく方が多い項目です。払い方と、払えない時の相談先を整理します。

会社が立て替える仕組みと精算方法

社会保険料は会社と本人が折半して負担します。本人負担分は通常、給与から天引きされます。休職中は天引きする給与がありません。

そのため会社が本人負担分を一時的に立て替えます。精算方法は会社によって異なります。毎月本人が会社の口座へ振り込む方式と、復職後の給与から分割で天引きする方式が代表的です。精算方法を確認しないまま休職に入ると、復職後に数十万円の請求が来て驚くことになります。休職前に人事へ確認しておきましょう。

立替分を払えない時に会社と交渉するポイント

立替分を毎月払えない場合、会社に交渉する余地はあります。ポイントは「払わない」ではなく「払い方を変える」提案をすることです。

具体的には、傷病手当金の入金後にまとめて払う、復職後に分割で払う、といった案を出します。会社側も立替金を回収したいので、現実的な案には応じやすいです。傷病手当金を会社の口座で受け取り、そこから保険料を差し引いて本人に渡す「会社受取方式」を採用する会社もあります。

住民税の分割納付・減免を自治体に相談する手順

住民税は前年の所得に対してかかります。休職して収入が減っても、今年の住民税は減りません。

会社の給与天引き(特別徴収)が続けられない場合、自分で納める普通徴収に切り替わります。納付書が届いたら、払えない分は自治体の税務課に相談してください。分割納付はほとんどの自治体で対応しています。減免は自治体の条例で条件が決まります。所得が大きく減った場合や生活保護に準じる状態が対象です。相談の際は診断書と傷病手当金の支給決定通知を持参すると話が早く進みます。

通院費・薬代を減らす制度とは?

休職中は通院が続きます。月2回の診察と薬代で1万円を超えることもあります。ここを減らせる制度が2つあります。適応障害の通院なら、自立支援医療が最初の選択肢です。

自立支援医療で自己負担が1割になる仕組み

自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患の通院にかかる医療費の自己負担を3割から1割に下げる制度です。適応障害も対象になります。

対象は指定した医療機関と薬局での診察・薬代・デイケアです。さらに所得に応じた月額上限があります。月1万円かかっていた通院費が、約3,300円まで下がる計算です。1年で約8万円の差になります。有効期間は1年で、更新が必要です。

申請に必要な書類と窓口

申請窓口は住んでいる市区町村の障害福祉担当課です。必要な書類は次のとおりです。

  • 申請書(窓口で受け取る)
  • 医師の診断書(自立支援医療用)
  • 健康保険証の写し
  • 所得を確認できる書類(課税証明書など)
  • マイナンバーがわかるもの

診断書は主治医に「自立支援医療の診断書」と伝えれば書いてもらえます。文書料が数千円かかります。申請日にさかのぼって適用される自治体が多いため、休職が決まったら早めに動くのが得策です。

高額療養費との使い分け

高額療養費は、1か月の医療費の自己負担が上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。上限額は所得で決まります。年収370万〜770万円なら約8万円が目安です。

精神科の通院だけで月8万円を超えることは少ないです。自立支援医療は通院向け、高額療養費は入院や検査が重なった月向け、と考えると使い分けやすいです。2つの制度は併用できます。

傷病手当金だけで足りない時に使える貸付・支援制度とは?

手取り12万円では家賃と生活費が回らない。そんな時に検討するのが、公的な貸付と支援制度です。「借りる」ことへの抵抗感は自然なものです。ただし公的貸付は民間ローンとは条件が大きく異なります。

生活福祉資金貸付制度の種類と条件

生活福祉資金は、都道府県の社会福祉協議会が行う貸付です。窓口は市区町村の社会福祉協議会になります。休職中に使いやすいのは2種類です。

種類 貸付上限 利子 用途
緊急小口資金 10万円以内 無利子 一時的な生活費
総合支援資金(生活支援費) 単身15万円以内・複数世帯20万円以内(月額) 連帯保証人ありで無利子、なしで年1.5% 生活再建までの生活費

緊急小口資金は傷病手当金の入金までのつなぎとして相性がよい制度です。返済は据置期間の後に始まります。コロナ禍の特例貸付は終了しており、現在は通常の貸付のみです。審査には相談員との面談が入ります。

国民年金保険料の免除・納付猶予

会社に在籍している間は厚生年金です。国民年金の免除は直接関係しません。ただし2つの場面で関わってきます。

1つは配偶者が国民年金の場合です。世帯の所得が減れば、配偶者分の免除申請ができる可能性があります。もう1つは退職した場合です。退職後は国民年金に切り替わります。退職を理由とした特例免除が使えます。前年の所得が高くても、退職の事実で審査されます。年金事務所または市区町村の年金窓口で申請できます。

生活保護を検討する目安と相談先

傷病手当金を受けていても、生活保護を申請できます。傷病手当金は収入として計算され、最低生活費との差額が支給される仕組みです。

目安は「貯金が底をつき、傷病手当金だけでは家賃と生活費をまかなえない」状態です。相談先は市区町村の福祉事務所です。申請の前に「生活困窮者自立支援窓口」で相談すると、生活保護以外の選択肢も含めて整理してもらえます。住居確保給付金という家賃補助制度もここで扱っています。

障害年金や労災は適応障害でも対象になる?

検索していると「障害年金」「労災」という言葉も目に入ります。適応障害で使えるのか。結論は「どちらも条件が厳しいが、可能性はゼロではない」です。期待値を正しく持つために、それぞれの条件を見ておきます。

障害年金の対象になりにくい理由と例外

障害年金の認定基準では、適応障害を含む神経症圏の疾患は原則として対象外とされています。適応障害はストレス因が取り除かれれば回復するとされるためです。

ただし例外があります。症状がうつ病相当の精神病性の状態を示していると医師が判断した場合は、認定の対象になります。診断名が途中で「うつ病」に変わるケースも珍しくありません。また、障害年金の請求は初診日から1年6か月後が原則です。傷病手当金の終了時期とほぼ重なるため、その時点で主治医に相談するのが現実的です。

業務が原因の場合に労災の休業補償が使える条件

長時間労働やパワハラなど、業務上の強い心理的負荷が原因なら労災の対象になり得ます。認定は「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づいて判断されます。

労災の休業補償給付は、給付基礎日額の60%です。さらに特別支給金20%が上乗せされ、合計80%になります。傷病手当金の約67%より高い水準です。しかも支給期間に1年6か月の上限がありません。ただし認定までに半年以上かかることが多く、認定率も高くありません。

労災と傷病手当金はどちらを選ぶべきか

同じ病気について、労災と傷病手当金は同時には受け取れません。労災が優先されます。

現実的な進め方は次のとおりです。まず傷病手当金を申請して当面の生活を確保します。並行して労災申請を進めます。労災が認定されれば、傷病手当金は返還し、労災の給付に切り替わります。労災申請は労働基準監督署に本人が直接申請できるため、会社の協力が得られなくても手続きは可能です。

休職と退職ではどちらがお金の面で有利?

「休職して会社に迷惑をかけるより、辞めた方が楽なのでは」と考える方もいます。気持ちはわかります。ただし金銭面では、休職を続けた方が有利なケースが多いです。退職した場合に何が変わるかを比べてみます。

退職後も傷病手当金を受け取り続ける条件

退職後も傷病手当金を受け取れます。ただし3つの条件があります。

  • 退職日までに健康保険の加入期間が継続して1年以上ある
  • 退職日の時点で傷病手当金を受給しているか、受給できる状態にある
  • 退職日に出勤していない

退職日に挨拶のために出勤すると、継続給付の権利を失う場合があります。退職日は必ず休みにしてください。この条件を満たせば、退職後も通算1年6か月まで受給が続きます。

失業給付との関係と受給期間の延長手続き

失業給付(基本手当)は「働ける状態で仕事を探している人」が対象です。傷病手当金を受けている間は働けない状態なので、失業給付は受けられません。

その代わり、受給期間の延長ができます。通常は離職から1年以内に受給を終える必要があります。病気の場合は最長3年延長できます。ハローワークで延長申請をしておけば、傷病手当金の終了後に失業給付へつなげられます。延長申請は退職後30日経過してから、できるだけ早く行います。

退職後に自分で払う健康保険料・年金保険料の違い

退職すると、会社が負担していた保険料の半分がなくなります。健康保険は3つの選択肢から選びます。

選択肢 保険料の目安 特徴
任意継続 在職時の本人負担額の約2倍 最長2年、傷病手当金の継続給付は可能
国民健康保険 前年所得で決まる 減免制度あり、自治体で異なる
家族の扶養 0円 傷病手当金の日額が3,612円以上だと入れない

年金は国民年金に切り替わります。月額約17,500円です。前述の退職特例免除を使えば負担を抑えられます。休職中は会社が保険料の半分を負担してくれているという事実が、休職継続の金銭的メリットになります。

休職中にアルバイトや副業をしてもいい?

手取りが減ると「少しだけ働いて補えないか」と考えたくなります。しかし休職中の就労には2つのリスクがあります。傷病手当金と就業規則です。先に確認すべき相手も含めて整理します。

傷病手当金が止まる可能性がある理由

傷病手当金は「労務不能」であることが支給要件です。アルバイトで働けるなら、労務不能ではないと判断される可能性があります。

短時間の軽作業でも同じです。健康保険側に「働ける状態」と見なされれば、支給停止や返還請求につながります。数万円の収入のために、月十数万円の手当を失うリスクは見合いません。

就業規則違反になるケース

多くの会社では、休職中の他社での就労を就業規則で禁止しています。休職は「療養に専念するための期間」という位置づけだからです。

発覚した場合、懲戒処分や休職の打ち切りにつながることがあります。副業が許可されている会社でも、休職中は別扱いになっているのが一般的です。就業規則の休職の項目を読み直してみてください。

収入を得たい時に先に確認すべき相手

どうしても収入を得たい場合、順番があります。最初は主治医です。働ける状態かどうかの医学的な判断が前提になります。

次に会社の人事です。就業規則上の可否を確認します。最後に加入している健康保険です。傷病手当金への影響を問い合わせます。この3者の確認なしに動くのは避けてください。収入を増やすより、支払いを減らす・猶予する方が安全です。

お金の不安を相談できる窓口はどこ?

ここまで読んで「制度は多いが、自分がどれを使えるかわからない」と感じた方もいるでしょう。1人で判断する必要はありません。相談できる相手は、身近なところから専門家まで複数あります。

主治医・会社の人事・産業医に相談できること

主治医には、診断書と各種申請書の記入を頼めます。自立支援医療の診断書、傷病手当金の証明、必要なら障害年金の診断書もです。「お金が心配で休職に踏み切れない」と伝えれば、使える制度を教えてくれる医師も多いです。

人事には、休職制度の内容、保険料の精算方法、傷病手当金の申請サイクルを聞きます。産業医がいる会社なら、復職の見通しと、それに合わせた生活設計を相談できます。休職前の面談で「お金のことを聞いても大丈夫」です。

社会福祉協議会・自治体の生活困窮者自立支援窓口

社会福祉協議会は生活福祉資金の窓口です。貸付だけでなく、家計の相談にも乗ってくれます。

生活困窮者自立支援窓口は、市区町村が設置しています。家計改善支援、住居確保給付金、就労準備支援などを扱います。「生活保護の一歩手前」の段階で相談できる窓口で、支援員が制度の組み合わせを一緒に考えてくれます。相談は無料です。

社会保険労務士・精神保健福祉士に相談するメリット

社会保険労務士は、傷病手当金・労災・障害年金の申請手続きの専門家です。特に労災申請や障害年金は、書類の書き方で結果が変わります。初回相談を無料で受け付ける事務所もあります。

精神保健福祉士は、医療機関や地域の支援センターにいる福祉の専門職です。制度の案内と、療養生活全体の相談ができます。通院先に精神保健福祉士がいれば、受診のついでに相談できます。申請代行業者を使う場合は、手数料と成功報酬の割合を事前に確認してください。

適応障害の休職とお金に関するよくある質問

制度を一通り見ても、細かい疑問は残ります。ここでは検索で多く見られる5つの質問に答えます。

傷病手当金に税金はかかる?

かかりません。傷病手当金は健康保険法に基づく給付で、所得税・住民税ともに非課税です。確定申告の対象にもなりません。

ただし翌年の住民税には注意が必要です。傷病手当金は所得に含まれないため、休職した年の所得は大きく減ります。翌年の住民税は下がりますが、休職中の今年は前年所得ベースの税額が続きます。

休職中に賞与は支給される?

会社の規定によります。賞与は法律上の支払い義務がなく、就業規則や賃金規程で決まります。

多くの会社は、賞与の算定期間中の出勤実績をもとに支給額を決めます。算定期間のすべてを休職していれば、支給なしになる会社が大半です。一部でも出勤していれば、日割りで支給される場合があります。

傷病手当金の1年6か月を使い切ったらどうなる?

同じ病気については、それ以上の支給はありません。この時点で取れる選択肢は3つです。

1つ目は障害年金の請求です。診断名や症状によって対象になる場合があります。2つ目は退職して失業給付を受けることです。働ける状態まで回復していることが条件です。3つ目は生活保護の申請です。1年6か月が近づいたら、終了の3か月前には主治医と社労士に相談を始めてください。

休職期間が終わっても復職できない場合の収入は?

就業規則で定めた休職期間が満了しても復職できない場合、自然退職または解雇となる会社が多いです。

その場合でも、退職後の傷病手当金の継続給付は使えます。加入期間1年以上などの条件を満たしていれば、通算1年6か月まで支給が続きます。退職後は健康保険の切り替えと、失業給付の受給期間延長の手続きを忘れないでください。

家族の扶養に入りながら傷病手当金を受け取れる?

退職後に家族の扶養に入りたい場合、傷病手当金の額が問題になります。扶養の収入基準は年130万円未満です。日額に直すと3,612円未満になります。

傷病手当金の日額が3,612円以上なら、受給中は扶養に入れません。月収が約16万円以上あった方は、日額がこの基準を超えます。傷病手当金が終了した時点で扶養に入るのが一般的な流れです。

まとめ

適応障害で休職しても、収入がゼロになるわけではありません。傷病手当金で給与の約3分の2が入り、自立支援医療で通院費を減らし、支払いの猶予と公的貸付で空白期間をつなぐ。この組み合わせで、療養に専念できる家計は作れます。

この記事で触れられなかった点として、復職に向けたリワークプログラムがあります。医療機関や地域障害者職業センターで実施されており、自立支援医療の対象になる場合もあります。また、休職中に生命保険の「就業不能保険」に加入していた方は、保険会社への請求も確認してください。

今日できる一歩は2つです。1つは人事へのメールで、保険料の精算方法と傷病手当金の申請サイクルを聞くこと。もう1つは市区町村の窓口で自立支援医療の申請書を受け取ることです。この2つを動かせば、休職中のお金の流れは大きく変わります。

参考文献

  • 「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」-「全国健康保険協会(協会けんぽ)」
  • 「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」-「厚生労働省」
  • 「自立支援医療(精神通院医療)」-「厚生労働省」
  • 「生活福祉資金貸付制度」-「厚生労働省」
  • 「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」-「日本年金機構」
  • 「障害年金」-「日本年金機構」
  • 「休業(補償)等給付」-「厚生労働省」
  • 「精神障害の労災認定」-「厚生労働省」
  • 「生活保護制度」-「厚生労働省」
  • 「生活困窮者自立支援制度」-「厚生労働省」
  • 「傷病手当金の非課税の取扱い(所得税)」-「国税庁」